「AIになんでも相談し、文章を考えてもらっていると、なんだか自分がAIに支配されているような気持ちになる」
「AIの言う通りに物事を考えてしまっているのではないか」
急速にAIが普及した今、こんな漠然とした不安や違和感を覚える人が増えています。たしかに、自分ではうまく言語化できない考えや疑問をAIがあっという間に鮮やかな文章にしてくれる様子を見ると、「人間の思考や判断までAIに取って代わられたのではないか」と錯覚してしまうのも無理はありません。
しかし、結論から申し上げます。あなたがAIを使って思考を整理しているとき、あなたは決してAIに支配などされていません。むしろ逆で、あなたがAIという新しい道具を主体的使いこなしている証拠なのです。
なぜそう言えるのか。理由はとてもシンプルです。AIは「あなたの中に最初からあった思考の種」を、外に引っ張り出す言葉の道具に過ぎないからです。
そもそも、どれほど優秀なAIであっても、自分から「社会のここがおかしい」「こんな未来はどうだろう」「現場の泥臭さをどう残すべきか」といった問題意識や疑問を自主的に生み出すことはできません。AIが出してくる回答は、すべてあなたが投げかけた「問い」の質や、あなたが胸の中に抱いていた「違和感・こだわり」に反応して組み立てられたものに過ぎないのです。
私たちの頭の中には、日頃の仕事や生活、人生経験を通じて蓄積された「ぼんやりとした思考」や「言葉にならない違和感」がたくさん眠っています。これまでは、それを1人で悩み、ノートに書き出し、時間をかけて言葉にしていました。その「言葉にする作業(言語化)」を、いまAIというツールが手助けしてくれているだけです。
絵描きが筆を使い、大工が電動工具を使うのと同じです。電動工具を使ったからといって「工具に家を建てさせられている」とは誰も思いませんよね。家を建てる場所を決め、どんな家にしたいかを想い描き、工具を手にして指示を出しているのは、どこまでも人間です。
AIとの対話も全く同じです。
「なにかおかしいのではないか?」という疑問の芽を育て、AIが出してきた言葉に対して「そう、それが言いたかったんだ」「いや、そこはちょっと違うな」と判断を下しているのは、他の誰でもないあなた自身です。その葛藤や判断の軸がある限り、主導権は常にあなたにあります。
もし本当に人間がAIに支配されるとしたら、それはAIが賢くなった時ではありません。「自分の中に疑問やこだわりを持つことをやめ、AIが出した答えを何も疑わずに鵜呑みにした時」です。
「自分が感じているこの違和感を、どうやって言葉にしようか」と悩み、AIを相手に問いを投げかけている時点で、あなたは思考を放棄していません。むしろ、自分の頭の中にある本質的な考えを社会や他人に届けるために、AIという最新の「ペン」を誰よりも貪欲に使いこなしているのです。
AIに支配されているのではないかと不安になったら、こう思い出してください。
「問いを生み出せるのは人間だけ。AIはその想いを映し出す、ただの高度な鏡に過ぎない」と。
自分の頭の中にある「思考の種」に誇りを持って、これからも堂々とAIを使い倒していきましょう。